傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

さよならTwitter

 SNSをやっていないために「生きているか?」という意味のメールをもらってしまった。
 私はシステムとしてのSNSは使用している。しかし、「知り合いや好きな有名人の投稿を日々閲覧する」という使い方はしていない。
 Facebookのアカウントは仕事のために持っている。検索すれば所属と肩書きがわかって連絡が取れる個人アカウントが必要なのである。投稿は最初からいっこもしていない。用途としてはメールであり、名刺である。
 Instagramも最初からいっこも投稿していない。こちらは飲食店の予約などでDMを出すために使用している。電話よりDMだと助かる旨を先方が明記しているケースがあるし、予約の空き状況がわかったりして便利だ。
 私は自分の生活を発信する必要を感じない。人のSNSにも興味がない(まとまった表現には興味がある)。だからSNSSNSらしく使った経験がない。インターネットで知り合った人と再会する前に近況をチェックすることがあるという、その程度の距離感である。
 Twitterの主な使い方はニュースフィードだ。新聞社や通信社のアカウントをリストに入れ、ヘッドラインとして朝晩流し見している。出版系アカウントなどをまとめた趣味のリストもある。流れてくれるので見やすい。否、見やすかった。
 投稿している唯一のSNSTwitterサブアカウントである。サブというか、本名のメインアカウントがなくて筆名のアカウントだけがある。これはブログの更新通知のために作成するよう言われて作った。ブログはフィクションなので、筆名の人としてじかに何か言うときには投稿する。それもバズるとなんか変な人がDMを送ってくるから、最近はあまりやっていない。

 そのTwitterアカウントへのブログ記事連携を、私はしばしばミスする。今回もミスした。毎週火曜日の19時に更新しているのだが、予約投稿設定を忘れることがあるのだ。あるいは日付や時間を選ぶときに手がすべって、午前零時になっていたり翌週になっていたりする。
 それでもニュースフィードを見るときに「今日は火曜日だから筆名アカウントの投稿ができているか見よう」と思う。それでミスがあっても気づいてリカバリできていた。今までは。
 Twitterは何やら変なことになって、リストが見たいのに「おすすめ」とやらが表示されるのである。私のTwitterはニュースフィードだから、気になる記事はクリックして読む。読み終わると記事のタブを閉じる。閉じたらまた「おすすめ」に飛ばされる。面倒でかなわない。それで見なくなった。
 ニュースのヘッドラインのラクな取得方法を考えないとなあ、と思った。主要新聞社のデータベースを使用できる環境にあるから、新聞本体(?)は週に二回ほど読んでいるのだけれど、これを毎日やる時間はない。

 そのようにして私はTwitterのアプリを開かなくなり、火曜日の投稿ができていないことに気づかないまま金曜日を迎えた。それで読者の人がメールをくれた。「なにしろずっと毎週火曜日に投稿されていたので、何かあったのではないかと心配になりまして」とのことだった。恐縮である。とくに何もないです。元気にしております。もともと、投稿設定ミスはしょっちゅうしているんです。ただTwitterアプリを立ち上げていなかっただけです。
 長いこと書いていると長いこと読んでいる人もいるものである。記事は時間があるときに書いてためておき、自動投稿の設定をして機械的に公開している。「あまりに毎週きっちりなので、AIが書いていると思っていた」と言われたこともある。それで十何年やっているのだから、誰かの「いつもの」になっていてもおかしくない。毎朝近所で見かけるおじいさんがいるのだが、あの人を見ないと私も不安になる。

 私がインターネットで人と知り合いたいときには、その人が書いているもの(本とかブログとか)を全部読んでメールで感想文を送る。最近はTwitterのDMのほうがよく使われるので、DMで感想を送りつけて友だちを作っていた。
 でもこれからはそういうことはあまりできなくなるんだろう。みんなそれぞれ好みのSNSに行って、多くは事実上クローズドなコミュニティを形成して、その中で文章を書いたりするのだろう。私はたぶんそこには行かないだろう。サービスを選ぶことを考えるだけで、もう面倒である。
 そういう人間が曲がりなりにも使えた唯一のSNSTwitterだったのかもしれなかった。