傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2009-01-01から1年間の記事一覧

「ふまじめな叔母さん」という役回り

いとこがJICAに落ちてさあ、と彼女は言った。彼女の年下のいとこが就職活動をやめて青年海外協力隊に申し込んだものの、入れなかったのだという。 しばらくそのいとこの話を聞いたら、もう全開で自分探しをしている感じだったので、私は、「ものの本によると…

ほんとうが見えない

彼女は科学者で、でも辞めるという。 どうして訊くと、ほんとうのことが見えないから、と言う。 ほんとのことが知りたくて、彼女は科学者になった。 彼女はもちろん、科学が細密に積み上げられた大量の仮定でしかないことを知っていた。でもそれを続ければそ…

しろうとの楽しみ

美術の仕事をしている人と、どういう作品が好きかという話をしていた。 思いつくままにいくつか挙げると、 「いかにも本を読んで育った人という感じねえ」 と言った。 「なにかを感じるための回路が、文章ベースで開けているという感じ。うん、たとえば、『…

Camera! Camera! Camera!

生まれてはじめてカメラを持ったとき、旅行以外に撮る場面が思いつかなかった。それで、写真が好きだという後輩に、なにを撮ったらいいかな、と相談したら、「なんでも撮ればいいんですよ」という。 なんでもって、たとえばどんなものを、と訊くと、彼は手元…