傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2010-12-01から1ヶ月間の記事一覧

おしらせ

このブログのiPhoneアプリができました。以下、一部十月二十六日のお知らせエントリと重複しますが、概要をご紹介します。 本日Appleに申請され、問題がなければ来月上旬にリリースされます。価格は百十五円を予定しています。アプリ開発は@kattaxさん(ブロ…

私たちが犬だったころ

一年しかもたなかったと彼は言った。人間扱いされなかったんだよね、だから。それって具体的にどういうこと、と私は訊く。殴る蹴るだよと彼はこたえた。大人になってあんなに殴られると思わなかった。私は反射的に声を荒げた。なにそれ、どうして黙って殴ら…

監獄の夜

バスルームが廃墟っぽいです。彼女はまっすぐに私を見て言う。たしかにバスタオルホルダが壊れたままだし、ペーパーホルダも片側が割れているし、罅の入った排水口のふたも交換していない。 ごめんね、なんだか、面倒で、ふだん誰も出入りしないから取り繕う…

猫とコーヒーと人工的な嗜好

今年も乗り切りましたねと私は言った。おかげさまでと彼はこたえた。私たちはコーヒーカップを軽くかかげて乾杯に代えた。 彼の職場では毎年社員旅行が催される。彼は他人と同じ部屋で眠ることができない。公衆浴場もひどく苦手だ。けれど休むわけにはいかな…

読モとボーナスとまともな人間関係

読モ、と彼は言う。電話を通した声がくぐもっている。毒蜘蛛、と私は訊く。わざとだ。なに言ってんだモデルだよ雑誌の、プロじゃないしろうとの、と彼は言う。私は仕込んだ冗談が不発だったことにひそかに落ちこむ。それじゃあ美人だね、すらっとした。 美人…