傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2014-10-01から1ヶ月間の記事一覧

いくつかの種類の下劣な要求

同業の会社がいくつか参加しているパーティに出る。酔っぱらいに絡まれたので適当に笑顔で交わしてその場を去る。彼女はそういう人間に慣れているけれど、愉快ではない。しばらく社交を遂行していると、また同じ人物につかまる。少し離れたところにいる仲の…

欲望が見えない

テラスで待っていると待ち人が目の前を過ぎてどきりとする。斜め前を行く女性の肩に手をかけて歩いていた。軽くてのひらを置いて、ゆっくりと進む。凝視しても気づかない。店の前で彼はその肩からごく慎重に五本の指を離す。彼だけが店に入ってくる。視線が…

おまえはきっと帰らない

四捨五入して四十ともなると親の介護が話題にのぼる。女ばかりでかこんだテーブルの、見慣れた顔のひとつが言う。みんな、まだまだ先だって思ってるでしょう、うちの親はまだ若いから、元気だからって。むしろ子育ての戦力に数えてたりしてね。親もその気で…

卑しさを弁別する

久しぶりに連絡があったので彼女の好きなビストロを予約しようとしたらそれはいいと言う。どうしてと訊くと節約したいというのでうちに来てもらった。身なりはあいかわらず華やかだ。手土産持ってきたら節約にならないからねと言ったのに、有名な果物屋のお…