傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2023-05-01から1ヶ月間の記事一覧

一人であること、あるいは機嫌のいい犬

疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。そのために人々の楽しみが減り、数少ない疫病伝染性の低い娯楽に注目が集まった。その筆頭がキャンプである。 僕もご多分に漏れず毎月ソロキャンプをするようになった。子どもが中学…

缶詰課長の巨大な欲望

疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それから三年たった春、給湯室に「缶詰課長」の段ボールが復活した。 缶詰課長は総務課の課長である。もちろん本名ではない。年のころなら四十路の半ば、若いころ老けて見えるタイプ…

人生のピットイン あるいは老いについて

疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それから三年あまり、わたしの「ピットイン」はほぼ完了した。 三十歳とか三十五歳とか四十歳とか、節目の数字で自分の年齢について考える人が多いようだ。人間は成長期を終えたらず…

マスクを着ける要件

疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。それから三年あまり、世界的な緊急事態宣言が解除され、日本でも他の感染症と同じ扱いになった。この数日のことである。 それでわたしはマスクを観ている。人々がどのようにマスクを…

山田専務はきれいなおじさん

疫病が流行しているのでよぶんな外出を控えるようにという通達が出された。わたしの勤め先でもリモートワークが導入され、大勢が集まる対面の会議はぐっと減った。そのさなかにやってきたのが山田専務である。疫病禍を受けた組織改革の要としての、鳴り物入…