傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2015-12-01から1ヶ月間の記事一覧

さよなら幻の不惑

今年はおたがいいろいろあったねえと藤井が言う。いろいろあったと私も言う。「いろいろ」の内容をおおむね話しおえるとデザートにたどりついている。いつのころからか年末にふだんより張り込んで祝祭的な食事をとることが、私と私のいちばん古い友人の年末…

一時避難所として必要な技能

自分には子がないくせに小さい子のいる家に行くのがわりと好きで、呼ばれるとにこにこして行く。それだから私は数名の子に「ときどき来るおばさん」として認識されているんだけれど、今年は久々に新生児が誕生した。自分が産んだのでもないくせになんとなく…

やまとなでしこの声

お高く止まって相手を品定めしな、と私は言った。そして粗雑に、凶暴になる。あなたと同じくらい美しいけれど凶暴な友だちがいてね、ふたりで話してて知らない男から「お綺麗ですね」って言われたときなんか、一瞥だけくれて、「存じております」って返して…

口説く男を憎まないためのたったひとつの条件

そうだ今日は男の人から口説かれたのに不愉快じゃなくてね。不愉快じゃないのは珍しいからうれしかったよ。つきあうことはないだろうけど、なんだか感謝しちゃう、私の世界の殺伐度がすこし下がった気がするから。 彼女はそのように話す。殺伐度、と私は思う…

部分的自己開示と嘘の化合物

えー、独身なんですかあ。彼氏は当然いますよね。え?意外。ていうかもったいないです。見る目ない男多いですね?鶴見さんこんなにキレイで仕事もできるのに、なんなんでしょう。だめなやつ多いからなあ。あ、もしかして鶴見さんのほうから振っちゃうんです…