傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2011-02-01から1ヶ月間の記事一覧

ドミノの夜

主催の事務局からのメールをたよりに知らない人しかいないパーティに行く。仕事を終えてふだん降りない駅の改札を抜け、案の定まよって、いくつかの角を曲がり、ようやくそこにたどりつくと、壇上では人々が肩を組んで記念写真におさまっている。みんな楽し…

おなかじゃんけん

そういえば弟さんって今なにしてるんだっけ。何気なく訊いたら、彼女はわずかに眉をこわばらせて、それからほほえみ、働いてる、たぶん、とこたえた。たぶん? この五年近く、ほとんど話をしていないの。彼女はそう続けて私を困惑させる。五年前なら、彼女は…

嘘とさよなら

これからもがんばってくださいと誰かが言った。またどこかで。私も頃あいを見て彼に近寄り、あいさつした。それもう飽きましたと彼は言った。みんな同じこと言う。 だって定型句は便利ですよと私はこたえた。送別会では、またいつか。結婚式ではおめでとうご…

河川敷に捨てる

彼女はアウトドア用の折りたたみ椅子に座っていた。私は彼女に会釈してコンクリートブロックに腰をおろした。そこは河川敷の中でも高い確率で複数の猫と遭遇できる場所だった。私はそこでさわらせてくれる猫をさわり、さわらせてくれない猫をながめてぼんや…