傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2014-06-01から1ヶ月間の記事一覧

デイジー、デイジー

目をあけてああ来たなと彼女は思う。そろそろ来そうな気配はあった。ベッドに投げだした手足が遠くにあるような気がする。そこにあるべき筋繊維は半分くらいどこかにいってしまったみたいに感じられる。若かったころ、それはもっと頻繁に来ていた。そうでな…

彼らは値札を殺す

あの子みたいな、なんていうか作ってるの、俺、ダメだな。近くの席から男の声が聞こえた。だいぶ大きい声で、そうでなければ言葉遣いの端々まで聞き取ることはできない程度の距離が空いていた。声は断続的に高まりながらしばらく続いた。可愛らしさを取り繕…

おしらせ 雑誌「GINZA」に短い文章が載っています

雑誌「GINZA」2014年7月号(http://goo.gl/LZnkkP)に短い文章をふたつ書きました。「香りと女の物語」のなかに掲載されています。

同情と投影の作法

誰かが何か言う。別の誰かが別の何かを言う。遠くから大勢の声が聞こえる。てんでばらばらに勝手なことを言っている。あれを選ぶとひどい目に遭うよ。これを選ぶと人生失敗するよ。そっちを向いたらみんながきみを軽蔑するよ。無駄なことをしちゃいけない、…

パーフェクト・ウーマン最後の課題

可愛いねえと言うとありがとうと彼女は言った。でもそれ見本のまんまなの。見本のまんまにできるなんてすごいなあと私は感心してしまう。そもそも保育園の子の持ちもののすべてを手作りして刺繍まで入れるなんてすごいし、子どもを産んでいることもすごいし…