傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2018-09-01から1ヶ月間の記事一覧

羽鳥先生は静かに暮らしたい

わからない、と同僚が言う。そう、と僕は言う。そして説明をはじめる。僕にとって、わからないのはぜんぜん悪いことではない。その理屈はわからない、というならより多くの説明があればいいのだし、その感覚はわからない、というなら双方が「そんなものか」…

プリキュアになれなかった女の子

世のため人のために働くんだと思っていた。わたしは無邪気な自信家だった。将来はずっと口を糊することができると信じていて、それ以外の余剰があって、それでもって人に尽くすんだと思っていたのだから。高校生になっても、大学生になっても、なんなら社会…

バグ対応にストーリー

何かから逃げている。何かはわからない。でも逃げている。そのような感覚をずっと持っている。物心ついてからずっとある気がするけれど、強くなったのは高校生のころだった。そのころから、「逃げている」という感覚にとらわれると生活できないとわかってい…

劇場から出ない

だって仲良くなって何度かおたがいの部屋に泊まった相手なら、部屋の中を下着でうろうろするものでしょ。 私がそう言うと彼女は完全に沈黙し、それから、ほう、とつぶやいた。そのつるりとしたひたいに「保留」と書いてあるかのようだ。インテリジェントな人…