傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2018-04-01から1ヶ月間の記事一覧

安心を売る

当日の注意事項は以上です。何か質問のある方はいますか。いませんか。それでは明日、現地で10時にお待ちしています。どうぞよろしくお願いいたします。 わたしは口をつぐみ、終わり、という合図をする。わたしのそれは手を軽く前に掲げてから元に戻すという…

蛮勇と退屈

職場には男しかいないから、居心地はいいよ、えっと、要するに、ホモソーシャルなんだけどね。 僕がそう言うと目の前の女が黒いマニキュアを塗った爪をひらひらさせてでかい声で笑った。そして宣言した。なんだ、自覚してるんじゃん、よっ、このホモソ野郎。…

首切り職人の顛末

僕が行くのはつぶれかけた会社だ。人の首を切ったりすげ替えたりして企業を生き延びさせてカネをもらう。正確には僕の会社がそのような役割を標榜して僕を送り込み、僕は自分の役割を遂行する。送り込まれた会社は要するに先が長くないと宣告されたようなも…

最後の路上飲酒者

私たちは最後の路上飲酒者である。私たちは桜が咲いているときにはどうしても外で酒を、それも華やかで上等の酒を、複数人で、楽しく飲みたい。それに同意する友人を新しく得ることはきっともうできない。昔はたくさんの人が同意してくれたのに、ひとり抜け…