傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2018-01-01から1ヶ月間の記事一覧

なんでも上手な女の子

気を遣われていると思って緊張するとしたら、その相手は気を遣うことが上手ではない。もしかしてあれもこれも気遣いだったのではないかと思ったときにはもうだいぶ会話が進んでいる、それが上手な気遣いというものである。今日はそうだった。一対一で話すの…

基地に戻る

人が規範を学ぶときにはその境界を目撃しようとする。規範はたいてい暗黙の了解をふくみ、あるいは抽象的にしか言語化されておらず、ときに建前という名の嘘をふくむ。したがって規範の学習には実践が不可欠である。そんなわけでこの二歳児はローテーブルに…

私の頭が悪いので

自分がどこにいるかわからなくなる。正確には、自分がどこにいるか認識することなく歩いていた時間の結果として、現在地を把握できなくなる。私は歩く。私はスマートフォンを取り出す。それはいつでも現在地を示してくれる。自宅から近所といえるほどの距離…

友だちの解放奴隷の話

三百万ほどもらってくれないか。 友人がそう言った。言ったきり、いつもの顔して大きなカップでコーヒーをのんでいるのだった。私は少しひるんで、しかしそれを悟られないよう真顔をつくり、ジョージ・クルーニーか、と返した。それはなんだいと友人が訊くの…

お正月に帰る

あー疲れた、まじ疲れた。盆と正月ほんと嫌い。きみたちは俺の心のオアシスだよ、まあ飲んでくれ。正月だろうと何だろうといつも通りぼけっと過ごしているきみたちは最高だ。 盆と正月は妻の実家に行くんですよ、一日ずつ。泊まりだと耐えられないから、この…