傘をひらいて、空を

伝聞と嘘とほんとうの話。

2015-03-01から1ヶ月間の記事一覧

痛みの邪悪な使いかた

痛み止めを捨てられたのだとその知人は言った。彼女の夫は彼女が毎月のように頭痛で寝こんで家事と育児の一切をしなくなり、ときに有給休暇を取得までする数時間を、どうしても許容することができないのだった。 それが平日の昼間にやってきたなら、彼女の上…

あなたの不適切なみじめさ

久しぶりに電話をかけてきた知人から、転職後の近況の話を聞いた。十分ばかり具体的な話をしたあと、彼は自嘲して言った。悪くはない、ああ、悪くはないんだと思う、でも前の職場で挫折して、もうあいつらとは生活レベルから何から違うんだって、そう思った…

悪い反射の防ぎかた

けれども彼はそこに存在してるわけだよね。彼女は言う。そうだねと私はこたえる。彼がどんなに邪悪でも、彼のなかで女の大半が人間じゃないとしても、他人をただただ機能としてあつかうことで彼自身の人間性みたいなものが深く不可逆的にそこなわれつづけて…

人間性をうしなうためのほとんど確実な法式

彼は早めに結婚し、二十代のうちに離婚して、それからというもの彼女をとっかえひっかえするようになったのだそうだ。離婚から数年たって現在に至るまで、私は何人かの共通の知人から、彼に関する派手な、あるいは醜い噂を聞いていた。誰かがその話をするた…

愛に関する事後的な学習

人を上手にだいじにできる人ってやっぱり生育歴上で親とかに上手にだいじにされてきたことが多いよ、つまり、愛情に関して育ちが良い。そりゃそうだ、愛情に関する学習は親とか養育者の影響が初期値だもの、だけどさ、私は初期値が不利だからって人を上手に…